昭和天皇がA級戦犯合祀に不快感を示しておられたというメモが発見されたそうです。まず日経が昨日の朝刊一面で報じ、各社がそれに続いて報じています。朝日新聞オンライン版の記事によればメモの日付は1988年4月28日とあります。なぜ18年ほども前に書かれたメモがこの時期に急に見つかるのか大変不思議な思いがするのですが、8月15日が近いという時期は時期として、これまで誰も目を通していなかっただけなのであろうと軽く流しておきます。
それにしても発表されているメモは断片的なものであるにも関わらず、各メディアとも昭和天皇がおっしゃったことと断定した報道をしている。これは前・民主党衆議院議員(すでに辞職)永田寿康のメール問題のときと変わらない構図なのではないか。日経の朝刊記事の内容が本当であるとすれば確かにスクープですが、仮に違っていた場合は・・・・?今の段階で飛びついてしまうのは少々危険であろうと思います。果たしてウラは取れているのでありましょうか。
メモの「私」を昭和天皇であると仮定して、日経の記事では『昭和天皇が1988年、靖国神社のA級戦犯合祀に強い不快感を示し、「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」と、当時の宮内庁長官、富田朝彦氏(故人)に語っていた』と「A級戦犯」が前面に出ている内容になっています。が、毎日新聞オンライン版が示したメモ全文によれば、
『私は 或る時に、A級が合祀されその上 松岡、白取までもが、
筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが
松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々と
松平は 平和に強い考があったと思うのに 親の心子知らずと思っている
だから 私あれ以来参拝していない それが私の心だ』
とあり、不快の念はA級戦犯の中では松岡洋右氏と白鳥敏夫氏の二人について力点が置かれていると読めます。日経の書き方はまるで東條英機さんらすべてを含めてA級戦犯合祀が悪いと読ませるような意図を感じます。
疑問点をもう一つ挙げれば、このメモが書かれたとされる1988年はすでに昭和天皇は体調をすっかり崩されていたはずです。普通、体調を崩して老い先短い身を思うと、自分に近いところにいる家族や友人のことを思うでしょうから、こうした回顧が果たして出来たのかどうかは、わし的にはかなり疑問です。
さて、ネットを巡拝しておりますと、このメモの内容は実は徳川侍従長が語った内容ではないのかと指摘する書き込みを見つけました。その徳川氏が語ったとされる記事はTV朝日のニュースステーションに出演していた清水建宇氏によるものです。
清水建宇の「異見あり!」◆ 昭和天皇は靖国へ行かなくなった ◆
(前略)
昭和の最後の2年間、私は宮内庁を担当していました。昭和天皇について知りたいことはたくさんありましたが、その一つは、なぜ1975年11月を最後に靖国神社へ行かなくなったのか、ということです。この問いに答えられる人は天皇の側近である徳川義寛・侍従長しかいません。何日も朝駆けし、出勤途中を待ちかまえて尋ねました。徳川侍従長は口が堅く、ほとんど無言の行でしたが、A級戦犯合祀と関係があるらしいこと、徳川侍従長も合祀に批判的だったことは分かりました。
後に侍従長を退いてから同僚の記者が取材した証言録によると、以下のような経緯でした。――靖国神社の合祀者名簿は例年、10月に神社が出してくるが、1978年は遅れて11月に出してきて、A級戦犯を合祀したいという。その10年ほど前に総代会はA級戦犯を合祀する方針を決めていたが、旧皇族である宮司の筑波藤麿さんが先延ばししてきたのに、宮司が代わると間もなく合祀を実施した。徳川氏は「松岡洋右さんのように軍人でもなく病死した人も合祀するのはおかしい」などと問いただしたが、押し切られた。
「靖国神社は元来、国を安らかにするために奮戦して亡くなった人をまつるはずなのであって、国を危うきに至らしめたとされた人も一緒に合祀するのは異論も出るでしょう」「筑波さんのように、慎重な扱いをしておくべきだったと思いますね」と、徳川氏は語っています。昭和天皇は、戦後も1952年を初めとして数年おきに靖国神社へ参拝していましたが、事実として、A級戦犯の合祀後は行っていません。
(後略)
(文中赤字は引用者による)
メモが本物であると仮定して、そこに書かれてある「私」が昭和天皇であられるのか、或いは徳川侍従長であるのか。或いは全く違う誰かなのか。それがはっきりしない限りは性急にこれら一連の検証に乏しい報道に飛びつくべきではないでしょう。
先にも書いたとおり、時期が時期ですしその筋の工作員による仕業であると疑うことも可能ですが、ひょっとして日経さんが自社社員のインサイダー取引容疑の報道をつぶすためにこのメモをウラも取らず昭和天皇のお言葉として書かれたとして利用したのであれば悪質極まりない報道であると言わざるを得ません。いえ、日本を代表する新聞社ですからそんなことはなさらないとは思います。失礼しました。
なにはともあれ、ここはしばしぼーっと続報を待つべし、ですね。
日経社員、近く取り調べ インサイダー取引の疑い
日本経済新聞東京本社の男性社員による株のインサイダー取引問題で、東京地検特捜部は19日、証券取引法違反容疑で男性社員を近く取り調べる方針を固めたもようだ。
関係者によると、男性社員は30代前半で、同本社広告局に勤務。今年2月までの数カ月間にわたり、企業が日経新聞に掲載を申し込んだ法定公告で株式分割などの内部情報を知った上、申し込んだ企業の関連株を公告掲載前に売買し、約3000万円の利益を上げた疑いが持たれている。
株取引は数銘柄の短期売買だったとみられる。
掲載前の法定公告は広告局内の共用パソコンで管理され、男性社員はパスワードを使って内容を閲覧したとされる。また男性社員は本来、内容を知る業務には就いていなかった。
(共同通信) - 7月20日2時2分更新
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